松本太大使からのメッセージ

令和4年10月24日
Ambassador Matsumoto
この10月19日にバグダードに日本大使として着任しました松本 太です。
チグリスとユーフラテスという二つの大河が生んだ一大古代文明の発祥地であり、アッバース朝の首都バグダードを誇る、偉大なる国イラクに日本を代表する職責を得たことは、私にとって大きな光栄であります。
イラクは、地域の平和と安定のために戦略的に極めて重要な役割を担ってきており、日本・イラク関係の強化は我が国の外交にとって極めて重要です。
イラクと日本の外交関係は1939年の国交関係樹立以来、80年以上にわたります。その間には様々な出来事が去来しましたが、長い年月を経て両国関係は幅広い分野において極めて緊密になっています。
そして来年は、新生イラクと日本は20年を迎える節目の年となります。これまで日本政府と日本国民は、長年にわたって厳しい生活を強いられてきたイラクの人々のことを心より思い、イラクの復興に向けて石油分野から、電力、上下水道、農業、医療・保健、教育に至るまで様々な支援を行ってきました。また、バスラからクルディスタンにいたるまで、あらゆる地域の人々が裨益できるように包括的な支援を提供してきました。とりわけ、優秀な人材の宝庫であるイラクにおいて、1万人をこえるイラクの人々に研修を行い、多くのイラクの人々が日本を訪問しました。
こうした日本の協力の総額は、債務削減まで含めれば167億ドルを超える規模になります。これはいかに我が国がイラクを中東安定のための要の国として重要視しているかを如実に示すものであります。
また、イラクの人々もこうした日本の努力や日本人の気持ちを多とし、日本や日本人への愛着を率直に語ってくれます。こうした関係は、真の「sadaqa」(サダーカ、友好関係)を現すものです。実は、私の大好きなアラビア語の一つは、「sidq」(誠実に真実を語ること)です。イラクと日本の人々は、真心をもって付き合い(sidq)、本当の友人(sadiq)となりました。
私自身、湾岸戦争以前より、ヒッラ出身のイラク人教師よりアラビア語を習い、故郷を離れ、厳しい環境におかれた、出自を異にする様々なイラク人を親友とし、34年にわたる外交官生活の中で常にイラクのことを思い続けてきました。この度、バグダードに日本大使として着任したことは、私にとって大きな名誉であり、私の運命と受けとめています。
だからこそ、日本の大使として、イラクと日本の関係を新たな高みに引き上げ、イラクの全ての人々―とりわけ、イラクの人口の大半を占める若い世代の人々ーが日本や日本人をもっと好きになるように全身全霊を尽くす決意です。
そのためには、私とこのバグダードの日本大使館へのイラク人の皆様の御理解と御支援が鍵となります。イラクの益々の平和的な発展と繁栄に向け、イラクと日本の皆さんと、ともに手を携えてイラクと日本のより良い未来を築こうではありませんか。
 
松本 太
駐イラク日本国特命全権大使